「一度辞めたら、公務員にはもう戻れない」
そう思い込んで、辞めることも、戻ることも、怖くて決められずにいませんか?
私もそうでした。警察事務を辞めて民間の広告会社に転職したあと、「やっぱり公務員に戻りたい」と思ったとき、真っ先に頭に浮かんだのは「今さら戻れるわけがない」「戻ったとしても、周りにどう思われるだろう」という不安でした。
結果から言うと、私は28歳で公務員試験を受け直し、市役所に戻りました。いわゆる「出戻り公務員」です。
この記事では、出戻りを決めてから合格し、実際に働き始めるまでを、時系列のドキュメントとしてお話しします。不合格だった試験も、面接で話せなかったことも、戻ってから言われたことも、そのまま書きました。
なお、警察を辞めて民間へ行った経緯や、2回の転職のどちらを後悔しているかは、公務員から民間への転職で後悔する人の特徴にまとめています。この記事は「戻る」ことだけに絞った内容です。
「辞めたら戻れない」は本当?私の出戻りを3つの数字で
まずは、私の出戻りを3つの数字で紹介します。
| 数字 | 中身 |
|---|---|
| 5つ受けて、2つ合格 | 経験者採用で市役所を5つ受験。最終合格は2つで、残り3つは不合格 |
| 1日2時間×約5か月 | 4月に勉強を始めて、8月下旬に結果が出た |
| 年収100万円近くアップ | 民間時代と比べた年収。警察事務の頃と比べても基本給が上がった |
つまり、「辞めたら戻れない」は本当ではありません。ただし、元の職場に自動で戻れるわけではなく、試験を受け直して、3つ落ちてやっと戻れたというのが現実です。
ここからは、その5か月間に何があったのかを順番にお話しします。
出戻りまでのドキュメント|決意から入庁後まで
【決意】給料、妻のひと言、同期の「良かった」
民間に移って、年収は100万円近く下がりました。そんなとき、妻が公務員に戻ることを勧めてくれました。さらに、警察を辞めて市役所に転職した同期が「良かった」と話していたのも大きかったです。
身近に「辞めてから市役所に入って良かった」と言う人がいたことで、「戻る」が現実的な選択肢に見えたんです。
ただ、気持ちは晴れやかではありませんでした。「また戻るなら、辞めなければよかったのでは?」と周りに思われていそう。そんな考えが頭から離れませんでした。
【受験先選び】警察に戻るか、市役所に行くか
受験先を考えるとき、警察事務にもう一度戻る道も考えました。仕事の流れは分かっているので、安心感はあります。
それでも最終的には、市役所の経験者採用を中心に受けることにしました。民間と警察の両方を経験して、警察とは違う形で人の役に立ちたいと思うようになっていたからです(この気持ちは、あとで面接の志望動機になります)。
【4月〜8月】1日2時間、SPIの算数に苦しむ
勉強を始めたのは4月です。当時は民間の会社を休職している最中だったので、時間はある程度確保できました。勉強時間は1日2時間くらいです。
受けた試験はSPIでした。一番苦労したのは、算数系(非言語)の問題すべてです。学生のころから時間がたつと、割合や速さの解き方はきれいに忘れています。
SPIの勉強法は公務員試験に2度合格した私のSPI攻略法にまとめています。
【受験】一次で2つ落ち、最終で1つ落ちる
結果はこうでした。
| 受験先 | 結果 |
|---|---|
| 政令市の市役所 | 最終合格(現在の勤務先) |
| 市役所A | 最終合格 |
| 市役所B | 最終試験で不合格 |
| 市役所C | 一次試験で不合格 |
| 市役所D | 一次試験で不合格 |
「元公務員なら有利でしょ」と思われがちですが、5つ中3つは落ちています。公務員経験があっても、試験は試験です。受かったところだけを受けていたら、と思うと、複数受けておいて本当に良かったと思います。
【面接】病気のことは話さなかった
面接で一番不安だったのは、「なぜ前の職場を辞めたのか」という質問です。
私は病気のことは話しませんでした。退職理由も、はっきりとは言わず、深掘りされすぎないように話しました。その代わりに力を入れたのが志望動機です(中身は次の章で紹介します)。
【8月下旬】合格
4月から勉強を始めて、8月下旬に結果が出ました。最終的に2つの市役所で最終合格。そのうちの1つ、政令市の市役所が今の職場です。
【入庁後】給料は上がった。でも「元警察」は言われる
戻ってみて一番驚いたのは給料です。年齢と前職の勤続年数が加算され、民間時代より年収が100万円近くアップ。警察事務の頃と比べても基本給が上がりました。「一番下からやり直し」だと思っていた私には、うれしい誤算でした。
一方で、職場では「前は警察だったんでしょ」と結構言われます。出戻りの人は、前歴が話題になりやすいもの。そう割り切っておくと、気持ちが楽です。
民間の仕事は「やりたいこと」だったので楽しさがありましたが、市役所はルーティンが中心です。それでも、給料と残業の少なさ、安定の強さを考えると、戻ったことは後悔していません。
出戻り受験でぶつかる3つの壁と、私の越え方
5か月をふり返ると、出戻りには3つの壁がありました。これから戻ろうとしている人がつまずきやすいところだと思うので、私がどう越えたかをまとめます。
壁①:ブランクで筆記の基礎を忘れている
社会人を何年かやると、学生時代の計算問題はほとんど解けなくなっています。私の場合はSPIの算数系でした。
越え方:苦手な分野から先に手をつける。1日2時間でも、約5か月続ければ間に合いました。試験の種類(SPI・SCOA・教養試験)は自治体によって違うので、まず受験先の試験を調べるのが先です。
壁②:「なぜ辞めたのか」を聞かれる
出戻りの面接では、ほぼ確実に退職理由を聞かれます。私は退職理由を深く語らず、代わりに「民間と警察の両方を経験したからこそ言える志望動機」を前に出しました。実際に伝えたのはこの2つです。
- 利益追求ではなく、相手の立場に立てる仕事がしたい:民間では、相手のためにならなくても利益が出ればOKという場面があった。相手の利益も考えられる仕事がしたい
- 事前に施策を打てる仕事がしたい:警察の仕事は事件の捜査や落とし物の返還など「事後対応」が中心で、手遅れになることも多かった。災害対策や公共施設の建設など、起きる前に手を打てる仕事がしたい
越え方:辞めたことを隠すのではなく、「辞めたからこそ分かったこと」として話す。病気を話すかどうかは人によって正解が違います。私自身も少し不安はありました。考え方は休職から転職、病気はクローズ?オープン?にまとめています。面接全体の準備は公務員試験に2回合格した私の面接対策も参考にしてください。
壁③:「出戻り」と思われるのが怖い
正直、これが一番大きな壁でした。「また戻るなら辞めなければよかったのに」と思われているのではないか、という不安です。
越え方:自分と家族にとって良い選択かどうかで決める。実際に戻ってみると、「元警察」という前歴は確かに話題になります。それでも、戻ったことを後悔したことはありません。「どう思われるか」を一番気にしていたのは、周りよりも自分自身だった気がします。
公務員に戻るルートと、広がる「出戻り歓迎」の制度
私は経験者採用で戻りましたが、ルートはほかにもあります。
| ルート | 特徴 |
|---|---|
| 経験者採用(社会人枠) | 職務経験がある人向け。SPIなどを使う自治体も多い。私はこのルート |
| 一般枠(新卒と同じ試験) | 年齢制限内なら受験可能。筆記試験の範囲は広め |
| 再採用制度(キャリアリターン採用など) | 以前その自治体・省庁で働いていた人向け。選考が簡略化されることがある |
最近は、辞めた職員を呼び戻す動きも広がっています。
- 国家公務員:2026年4月から、中途退職した人を再び採用する簡易な制度(いわゆる「アルムナイ採用」)が始まりました。退職前と同じ省庁に戻る場合は、面接だけでの採用も可能とされています。
- 地方公務員:結婚・出産・介護・転職などで退職した元職員を対象に、「キャリアリターン採用」などの再採用試験を行う自治体が増えています。
受験資格(年齢や職務経験の年数)は自治体ごとに大きく違うので、気になるところの募集要項は早めに確認しておきましょう。
公務員の出戻りQ&A
Q. 元の職場に戻ることはできますか?
A. 再採用制度がある職場なら可能性があります。ただし選考はあるので、必ず戻れるわけではありません。辞めたときの事情を知っている人がいることも考えて、私は別の組織(市役所)を選びました。
Q. 一度辞めていると、試験で不利になりますか?
A. 私の場合、5つ中2つに合格できたので、辞めたこと自体が決定的に不利になるとは感じませんでした。ただ、3つは落ちています。元公務員だからといって有利になるわけでもありません。
Q. 戻ったら給料は下がりますか?
A. 私は年齢と前職の勤続年数が加算されて、民間より年収が100万円近く上がり、警察時代より基本給も上がりました。ただ、どこまで加算されるかは自治体のルール次第です。
Q. 退職金はどうなりますか?
A. 一度退職すると、勤続年数はそこで区切られるのが一般的です。辞める前に確認しておきましょう。退職のタイミングについては公務員をやめるタイミングはいつがいい?で解説しています。
Q. 病気や休職のことは面接で話すべきですか?
A. 私は話しませんでした。ただ、正解は人によって違います。体調や働き方の配慮が必要な人は、オープンにしたほうが入ってから楽な場合もあります。
最後に|「戻れる」と知っているだけで、選択は少し楽になる
公務員は、辞めても戻れます。一度外に出たことで、待遇や給料が上がる可能性も、やりたい仕事に就ける可能性もある。これが、実際に戻った私の実感です。
「戻れる」と知っていれば、今の職場で無理をし続ける必要も、辞めたあとに自分を責め続ける必要もありません。
ただ、心や体がつらいときに、焦って決めることだけはおすすめしません。私の1回目の転職は、焦りから選んで後悔しました。休職と転職で迷っている人は、休職後、転職or復職?も読んでみてください。
この記事が、「辞めたら終わり」と思い込んでいるあなたの肩の力を、少しでも抜くきっかけになればうれしいです。

